便利になったはずなのに、なぜ仕事は減らないのか

IT

パソコンやインターネットが普及し、仕事で使うシステムも随分と便利になりました。

少し前までは紙で管理していた情報も、今ではパソコンやスマートフォンから確認できます。

メール、チャット、オンライン会議、クラウドサービスなど、仕事を効率化するための道具も数え切れないほどあります。

最近では、文章の作成や情報の整理、資料づくりまでAIが手伝ってくれるようになりました。

これだけ便利なものが増えたのですから、本来であれば仕事の時間は大幅に減っていてもよさそうなものです。

ところが、実際には以前より仕事が減ったと感じている人は、それほど多くないのではないでしょうか。

むしろ、連絡する相手が増え、確認する情報も増え、以前より忙しくなったと感じる人もいると思います。

便利になったはずなのに、なぜ仕事は減らないのでしょうか。

今回は、そんなことについて少し考えてみたいと思います。

まず一つ考えられるのは、便利になった分だけ、できることが増えたからです。

以前であれば、資料を一つ作るのにも時間がかかりました。

そのため、資料の数や修正回数にも自然と限界がありました。

ところが今では、パソコンを使えば短時間で資料を作れます。

コピーや修正も簡単ですし、AIを使えば構成案や文章のたたき台まで作ることができます。

その結果、資料作成にかかる時間は短くなりました。

しかし、資料そのものが減ったかというと、必ずしもそうではありません。

作るのが簡単になった分だけ、説明資料、会議資料、報告資料、補足資料など、作成するものが増えている場合もあります。

仕事を効率化するための道具が、結果として新しい仕事を生み出しているわけです。

連絡手段についても同じことが言えます。

メールが普及する前は、電話や郵送で連絡をしていました。

今ではメールだけでなく、チャットや社内SNS、オンライン会議など、さまざまな方法で連絡できます。

すぐに連絡できることは便利ですが、その一方で、連絡を受ける回数も増えました。

メールを確認し、チャットを確認し、会議に参加し、その内容をまた別の人に共有する。

連絡が速くなったことで、一つひとつの待ち時間は減りましたが、やり取りの総量は増えているように思います。

さて、本題ですが、仕事が減らない大きな理由は、業務の進め方を変えないまま、新しい道具だけを追加していることにあるのではないでしょうか。

例えば、これまで紙で作成していた申請書を、そのまま画面上の入力フォームに置き換えたとします。

一見するとデジタル化されたように見えます。

しかし、入力した後に印刷し、上司が押印し、さらに別の担当者がシステムへ入力し直しているのであれば、仕事はほとんど減っていません。

紙が画面に変わっただけで、業務の流れそのものは変わっていないからです。

システムを導入したにもかかわらず、念のためExcelでも管理する。

チャットで連絡した内容を、改めてメールでも送る。

会議の議事録を作った後に、別の形式で報告書も作る。

こうした重複作業が残っている会社は、決して珍しくありません。

新しい仕組みを導入するときには、新しく始めることばかりに目が向きます。

しかし、本当に大切なのは、これまで行っていた何をやめるのかを決めることです。

新しいシステムを入れたのに、古い作業をそのまま残してしまえば、仕事は減るどころか増えてしまいます。

もう一つ、仕事が減らない理由として、求められる水準が上がっていることもあると思います。

以前であれば、一週間かかっていた仕事が、システムを使って一日で終わるようになったとします。

それなら残りの時間が自由になるかというと、実際にはそうならないことが多いものです。

今度は、さらに詳しい分析を求められたり、より早い報告を求められたり、別の仕事を任されたりします。

仕事が速くなった分だけ、期待される成果も増えていきます。

便利な道具によって仕事の量が減るというよりも、一人ができる仕事の範囲が広がっているのかもしれません。

AIについても同様です。

AIを使えば、文章や資料を短時間で作ることができます。

しかし、作った内容が正しいか確認する必要があります。

会社の方針に合っているか、表現に問題がないか、重要な情報が抜けていないかも確認しなければなりません。

さらに、短時間で多くの案を作れるようになると、今度はその中からどれを選ぶのかという仕事が生まれます。

作る作業は減っても、確認や判断の仕事は残ります。

場合によっては、選択肢が増えたことで、かえって迷う時間が増えることもあります。

AIやITは、人の仕事を自動的に減らしてくれる魔法ではありません。

業務の目的や流れを整理し、どの仕事を残し、どの仕事をやめ、どこを自動化するのかを決めて初めて効果が出ます。

便利な道具を導入することと、仕事を減らすことは別の話なのです。

これは会社経営でも同じです。

新しいシステムを導入するときには、つい機能の多さや便利さに目が向きます。

しかし、機能が多ければ多いほどよいとは限りません。

使わない機能が増えれば、操作が複雑になり、管理する項目も増えます。

高機能なシステムを導入した結果、現場の負担が増えてしまうこともあります。

本当に必要なのは、今ある仕事をそのまま効率化することではなく、そもそもその仕事が必要なのかを考えることです。

なぜこの資料を作っているのか。

誰がこの情報を確認しているのか。

この承認は本当に必要なのか。

同じ内容を別の場所にも入力していないか。

こうしたことを一つずつ見直すと、システムを導入する前にやめられる仕事が見つかる場合があります。

業務改善というと、新しい仕組みを作ることだと思われがちです。

しかし、実際には仕事を増やすことよりも、不要な仕事をなくすことのほうが重要です。

新しい機能を追加するより、使っていない帳票を廃止する。

会議の効率化ツールを導入するより、会議そのものを減らす。

資料作成を自動化するより、作る資料の種類を減らす。

こうした見直しのほうが、結果として大きな効果を生むこともあります。

ただ、仕事をやめることは意外と難しいものです。

長年続けてきた作業には、「昔からやっているから」「念のため」「誰かが見ているかもしれない」といった理由がついています。

実際にはほとんど使われていない資料でも、なくすとなると不安を感じます。

新しい仕事を始めることには前向きでも、今ある仕事をやめることには慎重になるものです。

だからこそ、業務改善では仕組みだけでなく、人の意識や組織のルールも変えていく必要があります。

便利な道具が増えても、仕事の考え方が変わらなければ、忙しさはなかなか変わりません。

これからAIがさらに普及すれば、今より多くの仕事を短時間で処理できるようになるでしょう。

しかし、その分だけ新しい仕事や期待も増えていくと思います。

AIが資料を作るようになれば、人にはその内容を判断する力が求められます。

AIが分析するようになれば、人には何を分析させるのかを考える力が求められます。

AIが作業を代わりに行うようになれば、人には仕事そのものを設計する力が求められます。

結局のところ、便利になることで仕事がなくなるのではなく、人が担う仕事の中身が変わっていくのだと思います。

かくいう私自身も、新しいシステムやAIを使いながら、「これは本当に仕事を減らしているのだろうか」と考えることがあります。

作業が速くなったことで、別の仕事を増やしてしまっていることもあります。

便利なものがあると、つい使いたくなります。

しかし、本当に必要なのは新しい道具を増やすことではなく、仕事全体を見直すことなのかもしれません。

仕事を速くするだけではなく、仕事を減らす。

何かを始めるだけではなく、何かをやめる。

これから企業がITやAIを活用していくうえでは、この視点がますます大切になるように思います。

ということで本日は、便利な道具が増えたにもかかわらず、なぜ仕事が減らないのかについて考えてみました。

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