以前、「AIはもう未来の話ではない」という記事を書きました。
その中では、AIが人の仕事をすべて奪うというよりも、人の仕事の進め方を変えていくのではないか、ということを書きました。
今回はその続きとして、私自身が長く関わってきたITコンサルティングの仕事が、AIによってどのように変わっていくのかを、もう少し掘り下げて考えてみたいと思います。
ITコンサルタントの仕事というと、お客様の課題を聞き、業務を整理し、システムの構想を考え、資料を作って提案するというイメージがあるかもしれません。
実際には、それ以外にも会議の準備や議事録の作成、調査、課題管理、進捗管理、関係者との調整、システム要件の整理など、非常に多くの作業があります。
こうした仕事の中には、AIが得意とするものが少なくありません。
例えば、会議の内容を要約して課題を抜き出すことや、複数の資料から共通点や相違点を整理すること、システム要件のたたき台を作ることなどは、すでにAIを活用できるようになっています。
提案書や報告書についても、目的や前提条件を伝えれば、構成案や文章の下書きを短時間で作ることができます。
これまで数時間かけていた作業が、AIを使うことで数十分に短縮されることもあります。
プログラムの作成やテストについても同様です。
AIに処理内容を伝えると、プログラムのひな型を作り、エラーの原因を調べ、修正案まで提示してくれます。
もちろん、そのまま使えるとは限りませんが、何もない状態から人がすべてを作るよりも、随分と早く進められるようになりました。
さて、本題ですが、このような状況を見ると、将来的にITコンサルタントはいらなくなるのではないかと思う方もいるかもしれません。
確かに、資料を作ることや情報を整理することだけを仕事にしているのであれば、今後は厳しくなる可能性があります。
AIが短時間で一定水準の資料を作れるようになれば、資料を作ること自体には、これまでほど大きな価値が付かなくなるからです。
しかし、ITコンサルティングの本当の役割は、きれいな資料を作ることではありません。
お客様が何に困っているのかを理解し、複雑に絡み合った問題を整理し、どの課題から解決するべきかを判断することです。
お客様から「新しいシステムを導入したい」という相談を受けても、本当の問題がシステムにあるとは限りません。
業務の進め方に問題がある場合もあれば、部門間の役割分担が曖昧になっている場合もあります。
明確なルールがないまま、担当者の経験や勘だけで仕事が進められていることもあります。
こうした状況で、言われたとおりにシステムを導入しても、十分な成果は得られません。
何が本当の課題なのかを見極め、必要であればシステムを導入する前に業務そのものを見直す。
この部分は、AIだけで簡単に解決できるものではないと思います。
AIは、与えられた情報を整理したり、選択肢を示したりすることには優れています。
一方で、誰が何を話していないのか、なぜ部門同士の意見が合わないのか、表向きの要望の裏側にどのような事情があるのかを理解するには、人との対話が欠かせません。
また、複数の選択肢の中から何を選ぶのかは、企業の方針や予算、将来計画、現場の状況によって変わります。
技術的に最も優れた案が、その会社にとって最もよい案になるとは限りません。
最終的に何を選び、どのように進めるのかを決めるには、経営と業務とITを総合的に考える必要があります。
数年後には、ITコンサルティングの現場でも、AIが一人の補助者のように働くことが当たり前になっているのではないでしょうか。
会議が終わると同時に議事録が作成され、決定事項と課題が整理され、プロジェクトの進捗表も自動的に更新される。
必要な情報を指示すれば、社内資料や過去のプロジェクト資料を調べ、比較表や提案書のたたき台まで用意してくれる。
さらに先では、一つのAIだけではなく、調査を担当するAI、資料を作るAI、システムを確認するAIなど、複数のAIが役割を分担して仕事を進めるようになるかもしれません。
人は、それらのAIに目的や条件を伝え、出てきた結果を確認し、最終的な判断を行う立場になります。
そのような環境になれば、少人数のチームでも、これまでより大きなプロジェクトを進められる可能性があります。
一方で、AIによって仕事が速くなったからといって、必ずしも仕事が簡単になるわけではありません。
作れる資料の量が増えれば、どの資料が本当に必要なのかを判断する力が求められます。
選択肢が短時間で大量に出てくるようになれば、その中から正しいものを選ぶ責任も重くなります。
AIがもっともらしい間違いを出した場合に、それを見抜けるだけの業務知識やITの経験も必要です。
これからのITコンサルタントには、AIに指示を出す技術だけではなく、AIが出した答えを評価する力が求められるのだと思います。
もう一つ、大きく変わるのが若手の育成です。
これまでは、調査や議事録、資料作成などを経験しながら、少しずつ業務やプロジェクトの進め方を学んできました。
しかし、こうした作業をAIが行うようになると、若手が経験を積む機会が減ってしまう可能性があります。
単純な作業をAIに任せながら、どのようにして業務知識や判断力を身につけてもらうのか。
これは、今後コンサルティング会社が考えなければならない課題の一つです。
AIを使えば、経験が少ない人でも一定水準の成果物を作れるようになります。
ただし、成果物を作れることと、その内容を理解していることは同じではありません。
なぜその結論になったのか、別の選択肢はないのか、前提が変わったらどうなるのかを、自分の言葉で説明できることが重要です。
AIの普及によって、ITコンサルタントの仕事がなくなるというよりも、求められる価値が変わっていくのだと思います。
資料を作る人から、問いを立てる人へ。
情報を集める人から、判断する人へ。
システムを提案する人から、業務や組織の変化まで支援する人へ。
そうした変化が、これから数年の間に少しずつ進んでいくのではないでしょうか。
かくいう私自身も、AIを使いながら、どこまで任せるべきなのか、どこは人が考えるべきなのかを試しているところです。
便利だからすべてを任せるのでもなく、間違えることがあるから使わないのでもない。
AIの得意な部分を理解し、人が行うべき仕事と組み合わせることが大切なのだと思います。
ITコンサルティングは、もともと技術だけを扱う仕事ではありません。
お客様の業務を理解し、人と話し合い、変化を実現していく仕事です。
AIが進歩すればするほど、技術を使って何を実現するのかを考える役割は、むしろ重要になるのかもしれません。
ということで本日は、AIによってITコンサルティングの仕事がどのように変わっていくのか、数年後を想像しながら考えてみました。

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